パキスタン・シンド州における日本の開発援助


2021年4月28日
パキスタン・シンド州における日本の開発援助
在カラチ日本国総領事館は、日本の政府援助事業等のパキスタンでの取り組みについて、認知度を高めるため、2つのプロジェクトサイトの最新状況を当地の主要なメディアに向けて報告しました。教育、農業、人間の安全保障など様々な分野でパキスタンの発展に貢献している日本の好例として、「サッカル病院」と「シェールー・マハル公立女子中等学校」をご紹介します。
サッカル病院(シンド州サッカル市)
白血病や母子保健を専門とする同病院には、2015年に「草の根・人間の安全保障無償資金協力」の一環として、新生児用の保育器と病床が提供されました。シンド州北部では母子保健サービスが十分ではなく、またアクセスの制限からカラチ市やハイデラバード市などの大きな都市に移動することが難しく、十分な治療を受けられない女性・子どもが多く存在しています。このような背景から、北部のサッカル市に位置するサッカル病院に母子病棟が新設されたことを機に、妊婦や新生児のケアのための機器整備を支援しました。
この病棟ができるまでは、サッカル病院を訪れる女性や子どもの数は年間約15,000人でしたが、設備が不十分だったことから、それ以上の人数を収容することはできませんでした。同事業では、これを改善することで、年間治療を受けられる女性・子どもの患者数を10倍以上に増やすことに貢献しました。
今回の訪問では、保育器が適切にメンテナンスされ、良好な状態で使用されていることを確認できました。ただし、小児科病棟のベッドは、仕切りのない大きな部屋に配置されていることから、新型コロナウイルス感染症予防のため、現在は使用されていません。一方で、このコロナ禍の中でも同病院は営業を続け、患者を受け入れ続けています。
シェールー・マハル公立女子中等学校(シンド州ゴトキ県)
シンド州ゴトキ地区にあるこの学校は、国際協力機構(JICA)が2016年から実施している無償資金協力案件「シンド州北部農村部女子前期中等教育強化計画」の対象校25校のうちのひとつです。3月に同校を訪問した際、建物は良好な状態にあり、生徒数を半分に減らして十分な距離を取るなど、教育活動はパキスタンの対新型コロナウイルス感染症ガイドラインに沿って行われていました。
同プロジェクトは、女子教育に大きな影響を与えたと評価されています。JICAが手がけた全54校の女子学校(シンド州北部の25校の他、シンド州南部の29校でも同様の案件が行われています)での初等教育レベルの生徒数は9,679人、中等教育レベルの生徒数は6,124人となっており、コロナ禍以前の時点でプロジェクト実施3年後の数値目標を既に越え、シンド州郊外における女子教育に予想以上の大きな影響を及ぼしました。
さらに、これらの学校への支援は、コロナ禍の学校閉鎖がはらむ退学リスクを防ぐことにも効果を発揮しています。主に進学先となる女子に中等教育を提供する学校が不足していることを主な背景に、案件実施前は、対象校の女子生徒のうち50%以上が中途退学せざるを得ませんでした。同案件実施後には、留年率が70~80%改善され、中退率も50%から20~30%へと大幅に減少しました。それだけではなく、少数民族への教育機会の提供、宗教間の調和、教育を通じた社会問題の解決など、学校における地域社会の役割も強化されました。
今回ご紹介した無償資金協力案件では、日本の取組及びその波及効果が、パキスタン・シンド州の地方部に住む人々の生活を向上させるため役立てられていることが再確認されました。また、これらのプロジェクトは、同案件の恩恵を受ける人々にとって、日本の文化や人々に興味を持つきっかけにもなっています。



